かつてはぜいたく病とも呼ばれた時代もあった「痛風」・・・
近年の研究により、10年前の「痛風」の常識とは変わってきました。
2012年に初めて痛風を発症し、約8年間発作を起こさないよう気を付けてきた筆者が、2021年の最新の痛風事情として、現在までわかっている痛風のメカニズムや対処方法について解説します。
痛風の定義
2021年「痛風」の定義は10年前と比べ、それほど変わっていません。
痛風は「高尿酸血症」という病気によっておきる ”症状のひとつ” でそれを引き起こす原因が「尿酸」という物質です。
「尿酸」は、どんな人でも一定量、からだの中にあるものですが、プリン体という物質が、肝臓で分解されてできた燃えカスのことで、一定量以上が体にたまると、尿として体外に排出されます。
なんらかの原因で尿酸がからだに大量に残ってしまうと(現在の定義では血液中の尿酸が7.0mg/dlを超えると)、「高尿酸血症」と診断されます。
高尿酸血症が持続すると、蓄積された尿酸(カス)が固まって、関節などのからだのあちこちで炎症を起こし、そのせいで激痛が走る状態、つまり「痛風」になります。
尿酸値が高い状態を放っておくと
痛風発作などの症状が現れない場合を「無症候性高尿酸血症」といい、発作が起きないことでこれを放置すると、腎臓が悪くなり重症化することがあります。
それに加えて、尿酸が高いと将来、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や狭心症、さらには、慢性腎臓病から血液透析などの怖い病気を発症することもあります。
尿酸値が増えるメカニズム
私もこれまでは、通院先でも健康診断のときも、プリン体を多く含む食品を避けるようにと、食生活の改善を指導されました。
ですので、大好きだったレバーやあん肝をなるべく食べない、ビールはやめて焼酎かプリン体がカットの発泡酒に変えるなど心掛けました。
プリン体を多く含む食物による食生活では尿酸値を上昇させることは確かでした。
しかし、2018年のニュージーランド・オタゴ大学の研究では、さらに、食事の内容による尿酸値への影響は1%未満とごくわずかなもので逆に遺伝的な影響が23.9%であったとしています。
つまり、プリン体の多い食べ物を食べるよりも、遺伝的な影響の方が大きいということです。
尿酸が増えるメカニズムは、プリン体を含む食物を摂取すると、体内で代謝された最終産物として尿酸が産生され尿中に排泄されます。
それによって産生される尿酸は、総尿酸生産量の1/3程度といわれています。残りの2/3の尿酸は体内でプリン体(内因性)が作られた代謝産物として産生されます。
実はプリン体は生命活動には必要な物質で体内の細胞が活動し新陳代謝をしている限り、プリン体が生成されて尿酸は産生されます。
厚労省のHP:e-ヘルスネット
高尿酸血症の病型分類(尿酸の量の増え方のタイプ)
生命活動に必要な量以上に尿酸が体内に蓄積されたときに、高尿酸血症となってしまいます。
尿酸の量の増え方のタイプは、長い間プリン体から尿酸が多く産生される「尿酸産生過剰型」と、尿酸の出口である腎臓から尿酸排泄が低下する「尿酸排泄低下型」、そして両方の原因による「混合型」に分けて考えらてきました。
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会の2019年改訂版「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第 3 版」によると、
尿酸が腎臓以外に腸から排泄することに着目し、それが低下するため尿酸値が上昇するという「腎外排泄低下型」というタイプが追加されました。
日本人の痛風患者の場合、約8割がこのタイプと考えられています。
飲酒による痛風のリスク
★プリン体の多いビールを控えれば大丈夫!というわけではない!
近年の研究から、血清尿酸値の上昇は、体内での「プリン体」産生量や「尿酸」排泄量のほうが、アルコール飲料からの「プリン体」摂取量よりも影響を及ぼすことがわかっています。
せっかく、プリン体カットの発泡酒に変えても、その発泡酒を大量に飲んでしまっては元も子もないということです。
アルコールそのものが血清尿酸値を上昇させる理由
アルコールは代謝される際、体内での尿酸産生を増加させます。
また、アルコールを大量摂取すると乳酸を生じ、乳酸が尿酸の排泄を阻害する働きをして血清尿酸値を押し上げてしまいます。
さらに、アルコールを摂取することで、尿の排泄を抑制するホルモンの分泌が抑制され、多くの尿が体外に排泄されます。
つまりは多尿で脱水になることで尿酸がギューっと濃縮されます。
ビールはアルコール自体の尿酸値上昇作用に加えて、含まれるプリン体量が加算されるため、他のアルコール類に比べ影響が大きいのです。
アルコールについてはプリン体の量だけでなく、摂取量にも気を付ける必要があるということですね。
痛風かな?と思ったら(対策)
足の指の付け根が腫れて、足がつけないほど痛い。
「これは痛風かな?」と思ったら、対策はすぐ病院直行です。
痛風は生活習慣病なので、痛風の疑いがあれば内科に行くべきです。
今まで痛風と診断されて、明らかに同じ症状で痛い場合には、ロキソニンなど非ステロイド系抗炎症訳が効きます。
痛みどめ、炎症止めなどとも呼ばれる一般的な薬です。 ロキソプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ナプロキセン、プラノプロフェン、インドメタシンなどたくさんの種類があります。短期間に上限量を服用すると良く効きます。ただし、腎臓の機能が低下している人や胃潰瘍で治療中の人などは使えませんので要注意です。医師の注意を良く守りましょう。
いずれも、内科で尿酸値を測定して、アルコールを抑えるなど生活習慣改善の指導が入るか、尿酸値を下げる薬を処方されることになります。
プリン体の多い食べものの誤解
プリン体の多い食べものの誤解について
つい最近まで、ウニやカニ、エビ、魚卵系はプリン体が多い・・・ということをよく耳にしました。
特に魚卵系のイクラなどは、食べ過ぎると痛風になる!とまで言われました。
しかし、調べてみると意外にこれらの食品はプリン体が少ないんです。
なぜこんな誤解が世間に浸透したのでしょうか?
食品のプリン体含有量毎の分類
先の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、食品はそのプリン体含有量に応じて、以下のように分類されています。
200~300mg 多い
50~100mg 少ない
50mg以下 極めて少ない
主な食品中のプリン体含有量(100g中)
公益財団法人 痛風・尿酸財団HP「食品中のプリン体含有量 一覧表」より抜粋
・300mg以上 極めて多い
鳥肉レバー 312.2mg
マイワシ(干物) 305.7mg
ニボシ 746.1mg
干し椎茸 379.5mg
イサキ白子 305.5mg
・200~300mg 多い
牛肉レバー 219.8mg
カツオ 211.4mg
マイワシ 210.4mg
大正エビ 273.2mg
誤解のあった食品
・100~200mg 多いと少ないの間つまり普通
ウニ 137.3mg
タラコ 120.7mg
・50~100mg 少ない
ボタンエビ 53.4mg
豚骨ラーメン(スープ) 32.7mg
(麺) 21.6mg
・50mg以下 極めて少ない
イクラ 3.7mg
白米 25.9mg
チーズ 5.7mg
鶏卵 0.0mg
牛乳 0.0mg
考察
以上のように、魚卵である「イクラ」や「カズノコ」に関しては極めて少ない量です。
種類によりますが、カニではタラバガニが少ない、ボタンエビも少ない。
ウニやタラコは普通に分類されます。
意外だったのは豚骨ラーメンで麺、スープとも少ないです。
このようにプリン体含有量に誤解があった一部の魚卵を含む魚介類ですが、理由として考えられるのは、やはりプリン体が極めて多い、あんこう肝(酒蒸し) 399.2mgと白子 305.5mgの影響だと思われます。
どちらも魚の内臓ということ、また干し魚も極めて多い分類のため、魚介系全般が多い印象をうけてしまったのではないでしょうか。
この事実を知ってからは、ウニ、イクラ、エビ、カニは痛風を気にせず、安心して食べています。
これは精神衛生上も非常によいことだと思います。
私の痛風履歴
私が痛風発作を起こしたのは2012年が明けてすぐのことでした。
朝、いつものように出社すると、10時頃なんとなく左足に違和感を覚えました。
お昼過ぎにその違和感が明確になり、左足親指の付け根がじんじんと自己主張してくるのがわかりました。
15時くらいにはそれが痛みに変わり、だんだん地面に足がつけられなくなりました。
そして退社時間には、ついに歩けなくなりました。
その時、これが「痛風」であることを確信しました。
確信した、というのも実は5年ほど前から健康診断で尿酸値が8.0mg/dlを超えていて、再検査するよう言われていたのです。
それをずーっとほおっておいて、この発作の起きる4か月前に11.2mg/dlという素晴らしい値をたたき出してしまっていたのです。
翌日、迷わずに医者に行き、それから長い治療生活に入りました。
私の健康診断での尿酸値の推移を下のグラフに示します。
2011年の検査で11.2mg/dlという最高値をたたき出し、翌年発作を起こします。
基本、アルコールは休肝日なし、また食生活もレバーを筆頭にモツ系そして干物を好んで食べます。
処方された薬は当時高尿酸血症治療剤としては40年ぶりの新薬となる帝人ファーマの「フェブリク20mg」です。
発作以降2015年までは、食べる方はそれほど意識しませんでしたが、アルコールはやや控えめにしていました。
おそらくは薬の効果が大きいのだと思われますが、スペック(>7.0mg/dl)はクリア。
ところが、数値が下がると気が緩むのが人の常です。
2016年より再びアルコール量が増え、しかも健康診断の前日ギリギリまで飲んでしまうという体たらく。
再び数値が上がってしまいました。
2017年の検査の直後より、投薬量が倍の40mgになりました。
2018年の検査では、1週間前からアルコールは摂取せず、尿酸値は6.7mg/dlに落ち着きました。
診断予約の関係で、2019年をまたいでしまいましたが、本年ついに奇跡の4.5mg/dlを達成!
これについては、これまでアルコールを摂りすぎると尿酸値が上昇することは体感できていたのですが、今度は止めたら確実に下がるのかを確認したかったので、検査前、1か月間の断酒を行いました。
結果として、アルコールが尿酸値に及ぼす影響が非常に大きいことを自身の体で証明することになったのです。
すでに最近の研究で明らかになっているとおり、アルコールを大量摂取は、代謝での尿酸増加、尿酸排泄の阻害、さらに多尿による尿酸濃縮という高尿酸血症に製造機とでもいうべき、もっとも有害です。
今回、お酒を止めることで、長い投薬生活から解放される見通しがたちました。
今後は少しずつでも、減らす努力はしてみようと思った次第です。
まとめ
- 高尿酸血症は痛風だけでなく、腎障害のリスクも高くなります。
- 高尿酸血症は食品中のプリン体量の影響よりも遺伝要素の影響が大きいものの、プリン体を多く含む食品の摂りすぎには注意が必要です。
- アルコールはプリン体を含む量はもちろんですが、アルコールそのものの摂取量に気を付けましょう。
以上を踏まえて、自分自身も痛風が再発しないよう努力したいと思っています。
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